凍える冬の庭にコブシの枝先のふくらみを見つけると、春のきざしを感じて嬉しくなります。わたしにとってコブシは、冬の終わりを告げてくれる一番嬉しい花。コートにくるまりながら、でも間違いなくやってくる春に思いを馳せるのです。
四季をもつ日本は、なんて豊かなのだろうと春が来るたび思います。ロウバイの清廉な香り、紅白に咲くウメ、枝垂れる姿が美しいレンギョウ、早春を彩る花が終わると、やがて桜の季節です。桜はかつて、田植えの時期を知らせる樹木だったといいます。農村では桜を囲んで集い、その年の天候を占ったり、共同作業の相談をしたりしました。
花見は楽しみでもあり、その年の仕事始めでもあったのです。そう思うと、子どもたちの新たなスタート、入学式は、やっぱり春がふさわしいなあ、と思ってみたり。
桜が終わる頃になると、足元を見て散歩するのが楽しみです。それまで気づかなかった球根からニュッと出てきた花々が、われもわれもとひしめく様子は、まるで運動会。「待ってました!」と陽射しを浴びる姿に、こちらも元気をもらいます。毎日忙しいココロとカラダですが、せっかくこんな美しい日本にいるのだから、目の前に広がる季節をちゃんといつくしんで暮らしたい。花を見ていると、本当にそう思います。
Profile
石田岬(いしだ みさき)
ハーバルセラピスト。雑誌、書籍のプロデューサー、エディターとして20年のキャリアをもつ。現在は日本の食文化、手仕事の継承などをテーマにフリーランスとして活躍中。ファミリーホメオパス。
Update / 2015.03